BIS論壇No、443『中国の一帯一路構想』中川十郎 2452
中国の野心的な「一帯一路」に関しては2013年の習 近平国家主席のカザフスタン、インドネシアでの発表以来、かって商社に於いて20年間8カ国に海外駐在し、国際マーケテイング、国際市場開拓に尽力。その後、大学へ転身、30年以上国際マーケテイング、グローバル市場開拓の学術研究、教育に従事してきた者として関心を抱き研究して来た。
また10年前から名古屋市立大学22世紀研究所特任教授として未来予測を研究してきたが実務、理論の両面から中国の「一帯一路」戦略は21世紀の国際市場戦略として画期的なグローバル戦略だと評価している。
すなはち19世紀のパクスブリタ二カ、20世紀のパクスアメリカーナに次ぎ21世紀はパクスアシアーナ、パクスチネーゼ、パクスインジアーナの時代が到来することは確実で、その主要市場はユーラシア大陸が主戦場になることは人口、資源、物流上も自明である。
急速に衰退しつつある日本にとって、発展しつつある一衣帯水の中国の世界市場戦略の「一帯一路」その金融機関たる「アジアインフラ投資銀行」への参加が日本生き残りのためにも必須である。しかるに最近の日本企業、経団連、日本政府の中国敵視政策は上記の動きに逆行しており、米国の中国敵視政策に迎合し、問題である。
早急に日本独自の21世紀の通商政策を確立することが喫緊の課題であろう。しかるに日本のメデイアには中国の「一帯一路」に対する批判が横溢しており、時代の趨勢に逆行していることは誠に慙愧に耐えない次第だ。将来の発展センターたるアジア、ユーラシア大陸での「一帯一路」への日本の積極的な前向きの対応が強く求められている。
「一帯一路}に対する最近の日本のメデイアの批判を以下例に挙げる。『選択』24年5月号での論評は下記通りだ。『中国「巨大事業」は頓挫だらけ』、『東南アジア「一帯一路構想」の大嘘』。「施工率は3割台だ」と報じ批判している。(『選択』24年5月号36ぺージ)。
「中国~ラオス鉄道では総工費60億ドルだが、ラオスでは3割負担で19億ドルはラオス経済にとって大きな負担だ」。『一方、タイにとっては、習政権が仕掛ける「債務のワナ」がどんな結果をもたらすかは、すぐ北隣のラオスではっきり見ることができる』(同上36ページ)。『習政権の空虚なメガプロジェクトは彼らの言う「人類運命共同体」にたとえようのない損失を生み続けているようだ。』(同上 37ぺージ)。
一方、『新財界往来』24年5月号は『「一帯一路」中国の矛盾』、「大陸国家と海洋大国、二兎を追えば破綻する」と見出しを付け、『共産党政権の強権統治の遺伝子を持つ中国は公共性の強い海洋をも大陸的発想で統治しようとする。この手法そのものがすべての国に開かれた海洋が持つ「自由の海」という魅力をそぎ落していることに気が付かない「中国の悲劇」が存在する。』(同誌55ぺージ)。実態をしっかり見極めることが肝要だ。