今週のお薦め作品　5月3日公開「人間の境界」

　　　　　　難民問題はどこの国でも深刻な問題であり、本作はこの問題を真摯にとらえた問題昨である。

　　2021年ベラルーシ政府がＥＵに混乱を引き起こす為に多くの難民をポーランド国境へ移送する。ポーランド政府は難民の受け入れを拒否して、強制的に送り返す。映画は、この問題をテーマに難民家族の悲劇を描いている。難民からだけではなく、かれらを支援する活動家、取り締まる国境警備隊の視点からも描いた群像劇に仕上げており、2023年のヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した傑作となった。公開当時はポーランド政府から激しく非難され上映妨害されたが、当時の年間最高興収の大ヒットとなった。本作の監督は3度のアカデミー賞ノミネート歴のあるポーランドの巨匠アグニェシュカ・ホランドで、大量のインタビューや資料に基づきフィクションでありながら史実に忠実に映像化した結果が傑作を生みだしたと言える。政府が隠しがっていた難民迫害の事実を知る上でも本作の鑑賞を薦めたい。