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        2024年6月15日 

        話のタネ

        ビッグピクチャー

                元国連事務次長・赤坂清隆

         

        前略、

        先日、日本女性の地位向上を後援するグループの集まりで、現在の日本が置かれた国際的な立ち位置、グローバル・リーダーの条件、日本の女性が抱える課題などについて、英語でお話しさせていただく機会がありました。その際に使いましたパワーポイントを添付いたします。できるだけ最新のデータを集めて、ビッグピクチャーがつかめる様に努めましたので、皆様のお役に立てれば幸いです。ご笑覧いただけたら嬉しい限りです。

         

        まず、ご存じの通り、日本の人口が急速に縮小しつあります。6月5日付のニッポンドットコムの関連記事

        https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02015/

        (〈縮むニッポン〉出生率、過去最低の1.20、東京は0.99―人口動態統計 : 自然減84万人超に拡大 | nippon.com) をご覧ください。なんと、東京都の出生率は、1.0を割り込みました。人口を維持するには、おおむね2.07が必要とされていますから、東京都の出生率が0.99というのは衝撃的な数字です。

         

         

         

         

         

         

         

         

        人口だけではありません。日本の経済力は、現在のところ米、中、独に続いて世界第4位ですが、もうすぐインドに追い抜かれ、2050年までにはインドネシアにも追い抜かれて世界第6位に、さらに2075年までには第12位にまでダウンする見通しです(スライド6)。一人当たりのGDPでは、2023年時点で、世界第34位で、すでに台湾、韓国にも追い抜かれました。シンガポールや米国の約3分の1でしかありません。なんと、3分の1ですよ!(スライド7)。

         

        日本の世界競争力ランキングは第35位(2023年)、グローバル人材競争力指標では第26位、グッド・カウントリー指標では第34位、世界幸福ランキングでは第47位です。他方、評判、文化、影響力といったグローバル・ソフトパワー指標(2024年)では、第4位、ないしは第6位の高いランキングに位置しています(スライド8~11)。インバウンド観光客が激増しているのは、このソフトパワーによるところが大きいですね。

         

        こういうランキングの数字をいくら集めてもあまり意味がないのかもしれません。ランキングの取りようによっては、見方が大いに異なるかもしれません。それでも、日本が依然として世界の大国であり、国連常任理事国になるにふさわしい国であると胸を張り続けるのは、そろそろ片腹痛いと言われても仕方がない状況になりつつあります。目を覚まして、このような現実のビッグピクチュアを直視すると、日本は世界の中で中堅国(ミドルパワー)程度の位置を占める方向に急速に進んでいる(沈んでいる)と観念すべきかなという気がします。いかがでしょうか、悲観的過ぎるでしょうか?

         

        さて、世界で活躍できるようなリーダーの条件ですが、コロナ禍が貴重な教訓を残してくれました。あの危機に当たって、素晴らしいリーダーシップを発揮したのは、困難に立ち向かう強い意志力、総合的戦略を持って迅速に組織を動かす力、そしてコミュニケーション能力に長けた人物です(スライド12)。メルケル独首相ほか、世界の女性リーダーが大活躍しました。不安定で、先行きの見えない、いわゆる「VUCAワールド」(VUCAとは、不安定性、不確実性、複雑性、曖昧性の英語頭文字)に力量を発揮できるアジア人は、なんといってもインド人で、世界の大企業や国際機関のトップにインド人が多いのもうなずけます。このような不安定な世界に対応能力を欠くとみられているのが、残念ながら我ら日本人です。

         

        中国やインドの若者の大半が、自国には目標としたい優れたリーダーがいると答えているのに対し、日本の若者の多くは、そのような人物は自国にはいないと答えています(スライド15)。以前、このような質問には、緒方貞子さんを挙げる日本の若者が多かったのですが、緒方さんが国連難民高等弁務官を去られてからすでに4半世紀近くになり、周りにロールモデルになるような世界的リーダーが日本には本当に少なくなりましたね。

         

        逆に、ダメな上司というのは大勢いる気がします。自己中心的で、しかもそのことを自覚していない人物です。部下に期待するところを明確に伝えず、えこひいきをし、陰口をたたき、信頼が置けず、人の意見も聞かず、自分勝手な人というのが、典型的なダメ上司と見てよいのでしょう。自分自身を振り返って、冷や汗とともに、反省、自戒することしきりです(スライド17)。

         

        日本の企業の多くは、グローバル事業で活躍する人材に、文化や価値観などが異なる外国社会でも柔軟な対応ができること、既成概念にとらわれず、チャレンジ精神を持ち続けること、英語など外国語でのコミュニケーション能力を有することなどを求めています。新卒採用に当たって重視している要素としては、コミュニケーション能力、主体性、協調性、チャレンジ精神などが挙がっています(スライド18,19)。

         

        さて、それでは、女性のリーダーシップですが、ハーバード・ビジネス・レビューが、多くの面で女性のほうが男性よりも能力が断然高いとの調査結果を示しています。たとえば、イニシアチブをとること、部下を鼓舞すること、人間関係を築くこと、コミュニケーション能力、チームワーク、決断力、問題解決能力、多様性の尊重などの点です。男性が女性よりも優れているのは、唯一、技術的あるいは専門的な知識だけと指摘しています。リスクをとることにおいても、女性のほうが若干男性よりも優れているというから驚きです(スライド21)。

         

        このように能力の優れた女性陣ですが、日本国内では長い間冷遇され続けてきました。「世界経済フォーラム」が最近6月12日に公表した2024年のジェンダーギャップ指標によれば、日本の男女間の平等指数は、なんと146カ国中第118位です。女性閣僚が若干増えたので、昨年の第125位から少しだけランクを上げました。しかし、労働参加率や賃金格差などを反映して経済分野は第120位、政治分野は第113位、教育分野は第72位にとどまりました。下図の通り、日本の場合、政治参画、経済参画のランクは世界平均に比べて非常に低く評価されています。確かに女性の国会議員や閣僚の比率は、世界各国に比べて相当低い数字が続いています(スライド23,24)。(最新のデータは、ニッポンドットコムの記事

        https://www.nippon.com/ja/series/h000/

        (Japan Dataジェンダーギャップ指数、日本は146カ国118位―世界経済フォーラム : 政治分野は113位)をご覧ください。

         

         

        日本の民間企業でも、女性が部長、課長、係長といった幹部に就く割合は近年増加しつつあります。しかし、それでも上位の役職になるほど割合は低く、民間企業の部長級の比率はたかだか8.3%にしかすぎません。女性の役員比率についても、10%強まで伸びてきましたが、日本を除いたG7諸国の平均値(約39%)に比べればまだまだ低い水準です。

         

        また、最近とみに話題になっているのが、夫婦別姓の問題です。去る6月10日、経団連は、夫婦別姓を認めない現行制度は、女性の活躍が広がる中で企業のビジネス上のリスクになりうるとして、政府に対して、「選択的夫婦別姓」を認める法改正を早急に求める提言を行いました。現行の夫婦同姓制度のもとでは、95%の女性が夫の姓を選んでおり、事実上女性に不利な制度になっています。社会的な同調圧力があるのですね。このため、結婚をためらう若い女性も多いと言われます。経団連の提言は、この問題に重要な一石を投じたものといえます。

         

        最後に、日本の女性が置かれた現況をまとめますと、

        第一に、女性の民間企業における地位は近年改善を見せているものの、他の先進諸国に比べるとまだまだ低い。

        第二に、ということは、日本では、女性の地位向上の伸びしろが、他の先進国に比して大きく残っている。

        第三に、特に伸びしろの大きい分野は、政治参画と経済参画であり、これらの分野で、特別な政策(例えば、クオーター制度の導入など)の検討が急がれる。

         

        このようなまとめになるでしょうか?日本の国際的な地位がだんだんと縮小していく中で、これからの日本を元気にしてくれるのは、大きな野心を秘めた日本女性の活躍でしかないという気がします。公務員の世界では、すでに女性の活躍が目立ってきており、女性の大使、総領事の数も増えつつあります。民間企業でも今後ますます女性の地位が向上するでしょう。最後のスライドが示すように、女性の役員比率が高い企業のほうが、女性役員がいない企業よりも高収益を上げているとの調査結果もあります。日本の女性陣に、まだまだご苦労はあるでしょうが、前途に希望をもって引き続き頑張っていただきたいと、エールを送ります。(了)

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