BIS論壇 No.450『世界と日本の現状』中川十郎 24619
インテリジェンス、情報論に関し、かねて大前研一氏の理論に感銘を受けている。
かって筆者のビジネスインテリジェンス論文で競争情報(コンペテイテイブ・インテリジェンス)とビジネスインテリジェンスの比較をしたさい、同氏の「まず自社の経営戦略を策定し、そのあとで競争会社の動向は参考にすればよい。競争会社の動向を気にしすぎることは問題だ」との説に感銘を受けたことを思い出す。同氏は東京工業大学で修士号、米マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。日立製作所、米マッキンゼーを経て、現在、ビジネス・ブレイクスルー大学学長として活躍しておられる。 同氏の『第4の波』、『経済参謀』、『企業参謀』、『日本論点』、『世界の潮流』シリーズは有名で、情報論の観点からも得るところ大なるものがある。工学的な緻密な情勢分析は的を得ており、未来予想も的確である。近刊『世界の潮流 2024~25』(プレシデント社―24年5月刊)の世界情勢予測は的確かつ有益で得るところ大なるものあり、感銘を受けた。
一方、ユニークな視座からの情報論を展開しておられ、その情報分析力にかねがね注目している堤 未果さんの近著『国民の違和感は9割正しい』PHP新書 (24年5月刊)とともに一読すべき名著である。大前研一氏は中東情勢、ウクライナ侵攻、中国経済危機などに関し「マッドマン狂人のフェイク情報を見破れ」と強調。「組織化したマッドマンたちはフェイク(偽)情報を発信して、自分たちを正当化したり、都合のわるい事実を隠蔽したりしようとしている。」「これからの時代に必要なのは、そのようなフェイク情報に惑わされないように正しいものの見方や考え方を身に着けることである。」と力説。SNSなどでの情報氾濫時代に、眞のインテリジェンスの分析力、判断力をBIS会員各位が身につけるためにも、本書は一読の価値がある。本書の概要は下記で、一読し、正確な情報を身に着けられることを勧める次第だ。1章.混迷を深める世界情勢~独裁化したマッドマンと止まらない右傾化。2章、リセッション入りする世界経済~過剰債務とインフレが回復を阻害する。3章、凋落する日本~GDP世界第4位からの回復をするための処方せん。4章、中国の最新動向~孤立化する習 近平のジレンマ。5章、2024年の世界はどうなるか~日本が今すぐ取り組むべき課題。 各位の味読を期待する。
日本のみならず米国に関しても素晴らしい情報収集力と並外れた鋭い分析力を発揮しインテリジェンス関連の名著を出版しておられる堤 未果さんの『国民の違和感は9割正しい』も近来まれにみる名著だ。「裏金、新NISA,大増税・・カラクリを知り、身を守れ」と力説。
中でも2章の『ガザにある宝の山をみんな狙っている』でガザ沖36キロ、水深603メートルのガザマリン油田の約200億m3の天然ガス田が今回の紛争の背景だとの指摘(66ぺージ)は堤未果さんの並外れた情報収集力を証している。同書もぜひ味読されたい。