奥 義久の映画鑑賞記
2024年7月
*私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)
2024/07/04「ホールドオーバーズ」☆☆☆☆
本年度アカデミー賞助演女優賞、ゴールデングローブ賞の主演男優賞及び助演女優賞を獲得した上質な演技の傑作ドラマである。寄宿生活の名門バートン校では、クリスマスと新年は家族で過すため家に帰るが、や無得ず留まる生徒たちもいた。そのための今年の居残り指導教員は古代史を教えるハナム。融通が利かない教師のため生徒だけでなく教師仲間からも嫌われている。居残り組生徒の一人アンガスは勉強は出来るが反抗的な生徒。食事の面倒を見る料理長メアリーはベトナム戦争で一人息子を亡くしたばかり。3人は、雪に閉ざされた学校で反発しながらも心が触れ合っていく。タイトルロールからENDマーク表示なでが懐かしい60年代から70年代の雰囲気を漂わせる作品である。ハナム先生役のポール・ジアマッティとメアリー役のダヴィイン・ジョイ・ランドルフは冒頭に書いた通り本作で受賞をしている名演技を楽しんで欲しい。
2024/07/06「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」☆☆☆☆
ナチスからチェコの子供たち696人の命を救ったニコラス・ウィントンの実話の映画化。ニッキー(ニコラス)は第2次世界大戦直前のプラハでユダヤ人難民の悲惨な生活を見て、子供たちをイギリスに避難させようと活動を始める。ニッキーは何台かの列車に分乗させたが、開戦の日、250人の子供たちが乗った列車はSTOPされ家に戻された。その後はアウシュヴィッツ送りとなり、ニッキーは救えなかった命の重みに苦しんでいた。50年後ある事からニッキーの善行が知られ、救われた子供たちと再会出来る事になる。主人公ニコラスに名優アンソニー・ホプキンスが演じている。レナ・オリンが妻役、若き日のニッキーはジョニー・フリン、母役にヘレナ・ボナム=カーターといった芸達者の共演で感動の実話が傑作として誕生した。
2024/07/09「フェラーリ」☆☆☆☆
巨匠マイケル・マンが8年ぶりにメガホンをとった作品は、フェラーリ創始者の知らざる情熱を描いている。1957年イタリアの自動車メーカーのフェラーリは業績不振で経営危機に追われていた。この難局を打開するには、フェラーリが最高の車だと証明するためにイタリア全土を走る“ミッレミリア”に優勝する事だった。一方息子ディーの死によって崩壊した家庭は愛人リナと息子ピエロとの生活の足かせにもなっていた。エンツォの車への情熱と私生活の狂気をアダム・ドライバーが見事に演じている。妻ラウラ役にペネロペ・クルス、リナ役はシャイリーン・ウッドリーが脇を固めている。ロードレースシーンも迫力がある。
2024/07/11「潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断」☆☆☆
第2次世界大戦中のイタリア海軍潜水艦コマンダンテ・カッペリーニで起きた実話の映画化。1940年10月カッペリーニは艦砲装備した船籍不明の貨物船を撃沈するが、中立国ベルギー船籍であった。艦長サルヴァトーレは「我々は敵船を沈めるが人間は助けよう」と救助するが、艦内は狭く一部の救助者は艦上の司令塔にいる為に潜水できないためイギリス軍の支配海域を船行することになる。海の男の誇りと勇気が人命を救った感動の戦争秘話といえる。艦長サルヴァトーレを演じるのはピエルフランチェスコ・ファヴィーノ。
2024/07/13「KINGDOM 大将軍の帰還」☆☆☆★
天下の大将軍を夢見る少年・信と中華統一を目指す若き王を描いた人気漫画「キングダム」の映画化シリーズ第4作。今回は秦と趙の馬陽の戦いを描いている。シリーズ1作目から観なくても本作だけで十分楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっており、王騎編の最終章である。本作の主人公は大将軍・王騎と言っていいだろう。物語は馬陽の戦いとともに大将軍の若き日がえがかれており、そこに超の総大将。龐煖との因縁があり、本作の終盤の一騎打ちにつながっている。大沢たかお・王騎と吉川晃司・龐煖の迫力ある戦いは最高の見せ場である。主演はレギュラー陣の山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈、清野菜名、高嶋政宏、長澤まさみ、佐藤浩市、玉木宏らに加えて新たに超の軍師・李牧の小栗旬、王騎の婚約者のです。女将軍に新木優子が参加している。第1作目の時に中国を舞台にした中国人の歴史ドラマを日本人が演じる事の違和感があったが、本作では全くそれを感じさせない映画の面白さがあった。暑さが厳しくなった暑気払いを生ビールでなく映画鑑賞で暑さを吹き飛ばしてください。