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        新国際情勢下での日本の自主外交論議に注目!(初稿)

        福井県立大学名誉教授  凌星光

         

        6月7日夜のBSフジテレビ「プライムニュース番組」で、石破茂氏が対米依存ではない自主外交の主張が高まっていると指摘した。米中関係が対立する中、日本の今後の外交を見る上で極めて注目に値する視点である。

        戦後史に於いて、日本の外交は基本的に三つの流れがあったように思う。一つは米国に追随し日米安保条約を基軸とする外交を展開する。二つ目は平和憲法を守り、全ての国とよい関係を維持していく自主外交を展開する。三つ目は平和憲法を修正し、自衛力を持つと同時に、日本の国益に基づいた自主外交を展開する。石破氏は基本的に第三の流れに属する。

        前世紀80年代から今世紀10年代にかけて、米中関係が相対的に安定していた時には、この三つの流れは何れも日中関係に於いて矛盾するところが少なく、日中友好関係はスムーズな発展を遂げることができた。が、ここ7、8年、中国の存在感が高まり、米国覇権主義が揺らぐ中で、大きな転換点に直面することとなった。

        米国の対中政策が関与から競争(抑止)に変わり、国際情勢が緩和から緊張に変わっていった。こうした中で、日本における第二の流れが後退し、第三の流れの一部が第一の流れに合体化する傾向が出てきた。米国が表面的には日本に「対等な地位」を与えたことも、重要な促進要因であった。こうして親米反中の機運がこれまでになく高まっていった。

        このような流れの中で、中国叩きの諸論調が日本のマスメディアを支配し、日中友好の機運が著しく後退していった。ここに五つの主要論調を指摘し、その是非を分析してみたい。

        先ず中国軍事費膨張論。これは全く事実に合わない。中国の軍事力拡大、国防費7%増加を大きく喧伝し、中国脅威論が煽られている。が、物価上昇率を引いた実質では、経済成長率(5%前後)に見合った伸び率である。中国国防費の対GDP比率は1.2ー1.3%でずっと安定している。軍拡競争をしないと宣言し、米日の軍事費が急増(日本は2%に倍増、米国は3-4%)しても、特に増やすようなことはしていない。中国は明らかに米国覇権主義の脅威を受けている。にも拘らず、経済規模が米国の70-80%であるのに対し、軍事費は米国の25-30%である。

        第二に力による現状変更論。ここ10年、中国の「力による現状変更」が喧伝され、中国脅威論が煽られている。先ず東シナ海の尖閣への巡回は「係争棚上げ」を認めない日本への対応である。(注1)また南シナ海での人工島建設をはじめとする一連の問題は米国の干渉による矛盾の激化にある。1947年に国民党政権が11段線を宣告した時には、どこからも異議が出なかった。1980、90年代に於いて、鄧小平が「係争棚上げ、共同開発」を唱えた時には、どこも異議が出なかった。(注2)その後、米国が対中けん制を強化する戦略がとられるようになり、中国の対応も変わらざるを得なくなった。問題の本質は、中国の「力による現状変更」ではなく、米国の対中抑止力強化戦略にある。根本的解決策は、米国という外部勢力を退け、関係国の話し合いで「係争棚上げ、共同開発」に戻ることである。

        第三に台湾有事即日本有事論。安倍首相が2021年にこのような言葉を発し、2022年に岸田首相が「ウクライナは明日の東アジアかも知れない」と言ってから、中国脅威論が急速に高まった。それに加えて、2023年8月のペロシ議長台湾訪問後の中国の軍事演習及び今年5月20日「頼清徳総統就任演説」後の軍事演習も、台湾海峡の緊張度を高めた。が、事の本源はカイロ宣言やボツダム宣言及び国連2758決議に違反して、米国が内政干渉し、大陸台湾の統一を妨げてきたことにある。台湾の植民地支配を50年にわたって行ってきた日本は、本来、大人しく控えているべきなのに、米国の対中けん制に歩調を合わせ、「台湾有事即日本有事」を唱える。これは全く日本の国益及び東アジアの平和を無視した暴論である。

        第四に権威(独裁)主義国家論。バイデンが2021年に民主主義サミット会議を開き、「民主主義vs権威主義」の図式を提示し、中国を独裁主義国家として排斥するキャンペーンを展開した。それに対し、中国は、民主は多様性に富み、「全過程民主」即ち選挙、決定、管理、監督など全過程の民主を考慮すべきだとした。確かに、選挙は「協商」が重視され、投票は形式的に見える。が、よい面も多々ある。その上、政策決定に当たっては、広く意見を求め、実行に当たってはその管理監督、結果に対しては反省総括などが民主的に行われる。民主主義のないところで、40数年にわたる高度成長などあり得ないであろう。勿論、まだ多くの欠陥があり、改良すべき点は多々あるであろうが、独裁主義、権威主義と決めつけるのは説得力に欠ける。

        第五に毛沢東、文革回帰論。米中対立の国際情勢下で、米国および日欧での対中国人規制が強化されている。当然、中国でも民主集中制の集中が強調され、言論の統制が強化され、反スパイ法も強化修正された。この面では、甚だ残念なことだが、悪循環に陥っているのである。今日本では、毛沢東晩年の誤って起こした文化大革命と結び付け、習近平体制をなじる傾向にある。が、実際には、鄧小平の改革開放路線を堅持し、毛沢東の正しい思想、戦略戦術を新時代に適用させようとしている。文革期の「先破後立」ではなく、「先立後破」の考えの下、各分野の法整備が著しく進んでいる。ここ10数年間、戦術的ミスは若干あったにしても、戦略的段取りは実に見事なものであった。

        と言うわけで、以上のような国際的誤解は、今後、徐々に解かれていくであろう。そして、中国の国際的地位と役割はますます高まっていくと思われる。

        先ず米中関係は対立から共存に向かう。今後10年乃至15年間は対立が続くが、力関係は引き続き変化していく。対立中は軍事演習の力比べが行われるだろうが、「闘而不破(闘うが衝突はしない)」の局面が続く。米国が欧日を引き入れて対中国抑止力を強化しても無駄に終わり、米国の内向き志向が前面に出て、中国と真に話し合うようになる。即ち、軍事的覇権を漸進的に放棄せざるを得なくなる。

        米国の大統領選候補者ロバート・ケネディ・ジュニア氏の6月12日の講演内容は米中共存の世界を先取りしている。彼曰く:「米国は失敗に帰した反テロ戦争に8兆ドルも費やし、橋梁、道路、空港、学校、病院などを破壊したが、中国は同じようなお金で道路、学校、病院、空港を建設し、海外に於いて軍事力ではなく、経済力を投じている。米国は限りなき戦争で、世界を敵に回し破産をもたらしているのに対し、中国は投資によって多くの友人をつくり、世界の隅々にまでその影響力を伸ばしている。」そして、一極時代は過去のものとなった、アメリカは多極化の世界秩序を受け入れる必要があると述べている。

        次に中ロ関係を見ると、対米けん制で協力するが、同盟関係は結ばない。ウクライナ侵攻後、ロシアは西側の経済制裁と封じ込めに対抗するため、同盟関係を復活させようとする。6月19日、ロシアは北朝と軍事同盟を締結したのは正にその証である。しかし、中国は世界の分断に反対し、グローバル化を推進する。それは西側諸国に対してばかりでなく、ロシアに対しても同じである。ウクライナ戦争は勝者も敗者もない形での停戦に努力し、ロシアの国際社会での地位復活に手を貸すであろう。北朝鮮に対しては、その国際復帰に引き続き力を注ごう。新冷戦を助長するような外交政策は絶対にとらないだろう。

        第三に中欧関係を見ると、ドゴール以来の欧州の戦略的自立、軍事的自立志向を支持していく。現在、米国の覇権的地位を維持し、中国の台頭を抑止しなくてはならないということで、またロシアのウクライナ侵攻に対処するために、米欧日先進国の団結が強調され、中欧関係が後退している。しかし、EU誕生は米国覇権主義に対処するためでもあり、中国に対する誤解が解けるにつれて、中欧関係は改善していこう。本来、EUの理念は中国の多極化世界での協調という考えに合致する。また、中国はEUとグローバルサウスとの橋渡しの役割を果たすことができる。

        第四に中印関係を見ると、現在、大変悪いように見える。特にインドがクアッドに参加してからは、米日豪印の対中包囲網ができたような錯覚に陥っている。が、実際には、インドは非同盟主義を堅持しており、上海協力機構やブリックスの主要メンバーである。中国とは国境問題が存在するが、イギリス植民地主義が残したものあり、歴史的共通認識の下で合意に達することは難しくないはずだ。ましてや、中印両国は国際的影響力が益々大きくなっており、先進諸国による分断策は失敗する運命にある。また中印協力による経済メリットは大きく、中印関係が改善される可能性は極めて高い。

        最後に中国とASEANとの関係を見ると、現在フィリピンとの関係はよくないが、ASEAN全体とは極めて良い関係にある。一次関係がギクシャクしていた中国とベトナムとの関係も極めて良い状況にある。安倍首相が提起し、米国が受け入れたインド太平洋構想は中国を排除した中国包囲網を意図したものだが、ASEANは中国を含む、仮想敵国のないインド太平洋構想を打ち出した。当然、中国はそれを歓迎し、経済的組織ASEMUと共に、今後協力して推進していくでしょう。中国は一貫してASEANを中心とした東アジア共同体論を支持してきたため、築かれた相互信頼は実に固いものがある。

        以上、今後10年くらいの国際関係を展望してみたが、では日本の対中外交はどうあるべきであろうか。多くの識者は、対米従属外交から脱し、対米対中均衡外交、即ち中立の自主外交を展開すべきだと考えている。が、まだ水面下でのつぶやきに終わっており、マスメディアの主流は依然として、日米安保条約強化、米欧日協力強化による対中抑止力強化一点張りである。日中関係の雰囲気は極めて暗く、明るい日差しはまだ見えていない。

        しかし、期待できる動きがないわけではない。一つは中国らの訪日旅行客が大幅に増えている。これは中国人の対日感情は日本人の対中感情よりも良いからである。二つ目に、中国政府関係者の訪日団が増えている。ということは、中国政府は日本の対中非友好姿勢を一時的なものと見ている。三つ目に、中国との外交的対話は必要だと言う声が高まりつつある。日米安保条約強化論者も、中国との対話は重要だと強調する。四つ目に、たいへん限られているが、中国社会の実体を反映した客観的報道がマスメディアに見られるようになった。これからは、日本人の訪中者が増えて、国民レベルの相互理解が深まり、自主外交展開の条件が備わることを期待したい。

        最後に強調したいことは、米国の分断政策と一線を画し、日中友好協力を深めて、相互メリットを享受することだ。経済安全保障とか科学技術安全とかを名目にして、日中間の協力を著しく妨げている。本来、1980、90年代に於いて、中国は日本から多くのメリットを享受したことに鑑み、多くの中国人はご恩返しをしたいと思っているが、それができないでいる。実に惜しいことだ。宇宙開発で中国とフランスやイタリアとは協力しているが、日本とはない。日本政府は中国をライバル(実際には仮想敵国視)と見るのではなく、パートナーと見るべきだ。それには「国益のための自主外交」を確立する必要がある。

        (注1)1990年代、「係争棚上げ、共同開発」の掛け声の下、実際に共同開発が進められようとしていた。が、石原慎太郎たちの妨害で中止となり、オバマ政権が「第5条適用」を示すことにより、尖閣を巡る日中対立は決定的なものとなった。

        (注2)2002年に中国・ASEAN「南シナ海各国行動宣言」が締結され、南シナ海は安定していたし、更に行動規範を制定することが2012年の10周年記念で議論された。ところが、オバマ政権がアジア太平洋回帰、再均衡戦略を提起し、東アジアへの干渉を強めてきた。

        2024年6月19日

         

         

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