BIS論壇 No.452『タイ・ランドブリッジ』中川十郎24716
これまでタイのクラ運河計画がしばしば話題に上がっているが、このほどタイ運輸省は南部経済回廊推進を目指し、タイ南部のタイ湾側のチユンポンとアンダマン海側のラノーンの間を結ぶ陸上輸送ルート「ランドブリッジ」整備計画について民間企業の意見を聞く投資説明会「マーケットサウンデイング」を5月30日バンコックで開催した。
本説明会ではFeasibility Study(実現可能性調査)結果や暫定計画書、環境影響調査(EIA)、
事業開発モデルなどの説明がなされた。
タイ運輸省傘下の輸送交通企画事務局(OTP)によれば、この説明会には、民間側から中国・華北港口集団有限公司や、土木建築で有名なオランダのMaritime & Transport Business Solutions(MTBS)、タイのWHAグループ、日本からは三井住友建設、三菱商事など国内外の海運、港湾管理、建設関係会社などから100人以上が参加、関心を示した由。
各国政府関係ではオーストラリア、中國、インド、日本、ラオス、マレーシア、ミャンマー、パキスタン、韓国、ドイツ、イタリアの各大使館関係者も参加した。
本プロジェクトの総投資額は約1兆バーツ(日本円で4兆円)で、投資回収に24年を見ている。このタイ横断鉄道計画が完成すると貨物輸送はマラッカ海峡経由に比べ、4日間短縮され、タイ南部発展の起爆剤になるとみられている。
マレー半島を横断する陸上貨物輸送ルートは約90キロで6車線の高速道路、複線鉄道、さらに将来石油パイプラインを整備する計画もあるという。両端のチユンポン、ラノーンに深海港も整備する計画である。
事業期間は50年の官民連携(PPP)投資モデルで企業連合による共同投資を予定。財務的内部収益率は8.62%。投資回収期間は24年でタイ南部経済回廊の発展をめざしている。
このランドブリッジ構想が実現すると、タイは中国や日本、ASEANから中東、アフリカ、欧州への貿易ハブになるとみられる。
タイはこの事業で高付加価値農業の促進、高付加価値ツーリズム、インフラと物流ネットワークの発展推進、天然資源と森林地域の拡大、さらにスマートシテイや人財開発も推進するという。第一フェーズでは2030年までにチェンポン、ラノーン両港の開港を目指している。このランドブリッジが完成すると、マラッカ海峡通過に比べ、輸送日数は4日間縮小、輸送コストは15%削減見込みである。長年検討されているクラ運河の代替としてこのランドブリッジ構想は期待されている。本プロジェクトが完成すると、スエズ運河、パナマ運河に対し、インド洋と太平洋を結ぶ新たな物流システムが完成。世界の物流に革命的影響を与えることになるだろう。本ランドブリッジ構想の実現を大いに期待したい。