BIS論壇No.455『特攻隊ミユージカル、流れる雲よ』
中川十郎 2024年8月17日
8月17日 銀座8丁目博品館劇場で上演された『特攻隊ミュージカル・流れる雲よ』を観覧した。たまたま7月2日、BIS理事の佐藤公彦・三冬社社長が主宰された浅草での「日本舞踊文化祭」にBIS有志と参加。ゆかた大会の審査委員を仰せつかった。その審査委員の一人が筆者と同郷の鹿児島出身の屋宮直達氏で、同氏から招待されたものである。
劇場で配布された解説のパンフレットにBIS顧問の石塚隆正・Global Ethics 経営研究所社長が脚本家・奈美木映里氏(ペンネーム・草部文子)との関係で推薦状を書かれておられるのを知り、不思議なご縁に驚いた次第だ。
劇は 鹿児島知覧特攻基地が舞台で、鹿児島弁も出てきて懐かしみを感じた。観客には青年、特に若い女性が多かったが、すすりなきの声が聞こえ、若い女性も感動しているさまを目撃し、感銘を受けた。これも深刻な特攻隊の悲劇を、ミュージカル形式で演出しており、若い人に受け入れられている様がうかがえた。
『流れる雲よ』は日本のみでなく、これまで中東のドバイ公演や第77回フランス・カンヌ国際映画祭、さらにはエジプト政府劇場での公演など海外公演も行っており、第38回
ギヤラクシー賞奨励賞受賞作品でもある。
脚本は草部文子氏、演出は若手の田中寅雄氏、舞台美術は三越劇場公演も手掛けた、これも若手の増山麗奈氏が若い感覚で素晴らしい舞台を創造していた。
脚本家の草部文子氏は戦後79年目、本作品を上演して25年目になるという。このミュージカルには最近終わったばかりのパリ・オリンピクで入賞した馬術に関連し、かってオリンピックで入賞し、硫黄島で玉砕した西田大尉や、ウクライナ戦争、ガザ戦争にも触れて、若い観客の関心を引いていたのはさすがである。
国のために命を捧げた若い特攻隊員を含め、先の太平洋戦争で300万人以上の犠牲のもとに築かれた日本の今日の平和や繁栄が最近の岸田政権下、防衛費の2倍増額、敵基地攻撃容認の独走した閣議決定。台湾有事を見据えた、南西諸島の防衛強化など、あらたな戦前が始まりつつあるきな臭い日本の現状下、戦後のわれわれ日本人の新たな反省を求められた素晴らしい演劇であった。筆者の郷里の鹿児島大隅半島の鹿屋海軍特攻基地、串良陸軍特攻基地から終戦まじかに沖縄の米艦隊への特攻機の出撃を目撃した者として、国に命をささげた若い特攻隊員の御霊に哀悼の誠を捧げ、二度と戦争の惨禍を起こしてはならないと深く誓った、敗戦後79年目の8月17日の観劇であった。