今週のお薦め作品 10月4日公開「シビル・ウォー」
今、世界の何処かで内戦・隣国との紛争が起こっている中で、かつての世界の警察と言われたアメリカが二つに分断され内戦が起きたらというアイデアから生まれた問題作。サブタイトルのアメリカ最後の日、A24の史上最大の製作費とのキャチコピーを見ると迫力ある戦争エンターテインメント作品を期待してしまう。だが、内容はジャーナリストの視点から戦争の悲惨さを描いているが期待に反した出来栄えである。アイデアはいいのだが政府と西部連合(カリフォルニアとテキサス)の対立意図も明確でない。オープニングの発言で大統領が絶対権力者であり、ファシズムと民主勢力の対立があきらかだから良いとの監督の考えがパンフレットに記載されているが、この対立構造ならアメリカの必要がないと思う。アメリカという大国の悩みと世界観をふまえ、政治家の視点、戦争をしている軍人の視点、ジャーナリストの視点、戦争にまきこまれた一般人の視点等も表現して群像劇の戦争大作にすればアカデミー賞独占の素晴らしい映画が製作されたのではないだろうか?このテーマは起こりえないとは言えないから。唯一の救いはA24作品らしく問題提起と渋いながらも主人公にカンヌ国際映画祭で最優秀女優賞のキルステン・ダンストと新進気鋭のケイリー・スピーニー(本作後「プリシア」「エイリアン ロムルス」の主演でブレイク)が共演していることだろう。批判めいた感想になったが、一見の価値はある。