第一章 亀裂 ⑩如何したらいいの? そこへガタガタと日中文教協会船橋寮の崔(ツウ)くんが硬い表情で飛び込んできた。 「五十嵐サン、大変デス」 「どうした、崔くん」 「トラックガ、馮クントブツカッテ、入院シマシ […]
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⑨離婚の危機Ⅱ
第一章 亀裂 ⑨離婚の危機Ⅱ 「それはそれ、これはこれ。君のことと直接関係ないだろ」 「ソレハソレ、コレハコレデショウカ」 「楊くんよ、理屈はいいけど、とにかくね、明日にしてくれよ」 「僕、行クトコロナイ。 […]
⑧離婚の危機
第一章 亀裂 ⑧離婚の危機 「いま取りこんでいるから明日にしてくれないか。明日・・・あしただ。細かいことはその時にしてくれ。じゃあね」 勝は受話器を置いた。それを待って実博が言った。 「母さんとの話がもう […]
⑦喧嘩の原因
第一章 亀裂 ⑦喧嘩の原因 それにしても、おとうさんはやりすぎよ。息子の勉強机やスタンドまで本人やわたしに無断で持ち出し、中国留学生にくれてやっちまうんだから。 というフミの抗議に、勝はこう言ったのだ。 […]
⑥八百春の危機
第一章 亀裂 ⑥八百春の危機 だが、有り余るような勝のエネルギーが、このところずっと、なぜか中国留学生と呼ぶ若者たちに傾いてしまい、家業の青果店“八百春”は経営すらおぼつかなくなっている。 二人が結婚した翌 […]
⑤フミの性格
第一章 亀裂 ⑤フミの性格 フミも一本気だった。思うことを歯に衣を着せずに相手にぶつける。 そんなところは、勝と申し合わせたように酷似している。 結婚する前の若い二人は、お互いのそんな似た者同士といった雰 […]
④勝の性格
第一章 亀裂 ④勝の性格 勝の口は実によく動いたが、それにも増して、体が良く動いた。 他人から頼まれごとなどを持ち込まれると、ロクに事情や内容を 確かめないうちにポンと胸を叩いて「まかせてくれ」と口走って、さっ […]
③勝のアプローチ
第一章 亀裂 ③勝のアプローチ 勝は、東京神楽坂に本社をもつ、その菓子メーカー仙田商事の営業マンで、フミが働く直営ショップによく顔をみせた。 その彼もまたとびきり陽気な男だった。 しんみり考え込んだり、むっつりと黙 […]
②フミの生い立ち
第一章 亀裂 ②フミの生い立ち フミは東京葛飾は金町で生まれ育った。 葛飾は東京の北東部、江戸川をはさんで千葉県に向き合っている所だ。金町のすぐ隣は、渥美清主演の映画で有名なあの、寅さん、の 舞台になっている、柴又 […]
①初めての暴力
第一章 亀裂 ①初めての暴力 156センチ、小型だがグラマラスなフミの体が吹っ飛んだ。 かたわらに積み重ねてあった野菜の段ボール箱にフミが頭から ぶち当たって悲鳴を上げ、いきなり骨を引き抜かれたように、ヘナヘナとへたり […]